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ロケット方程式をPythonで解く|必要な燃料をツィオルコフスキーで計算する

2026-09-03実践

#ロケット方程式#ツィオルコフスキー#Python#宇宙工学#実践

「なぜロケットはあんなに巨大なのに、宇宙に運べる荷物はほんの少しなのか」——その答えは1本の式に凝縮されています。ツィオルコフスキーのロケット方程式です。この記事ではPythonで実装し、実際の数値を入れて「燃料が指数関数的に必要になる」現実を体感します。

たった1本の式

到達できる速度の変化 Δv は、次で決まります。

Δv = ve × ln(m0 / mf)
  • ve … 排気速度(燃料を噴く速さ)
  • m0 … 燃料込みの初期質量
  • mf … 燃料を使い切った後の質量
  • ln … 自然対数

ポイントは 質量比が「対数」で効くこと。速度を稼ぐには質量比を増やすしかなく、しかも対数なので「倍の速度」には「桁違いの燃料」が要ります。

Δvを決める3要素

🔥

排気速度

エンジンの性能

⚖️

質量比

m0 / mf

🚀

Δv

到達できる速度

準備

pip install numpy

① 排気速度を比推力から求める

エンジン性能はよく 比推力 Isp(秒) で表されます。排気速度は ve = Isp × g0

import numpy as np

g0 = 9.80665          # 標準重力 [m/s^2]
Isp = 350             # 液体燃料エンジンのおおよその比推力 [s]
ve = Isp * g0
print("排気速度:", round(ve), "m/s")   # ≈ 3432 m/s

② 必要な推進剤を逆算する

低軌道(LEO)到達には、空気抵抗や重力損失も含めて Δv ≈ 9,400 m/s が目安です。乾燥質量(構造+ペイロード)5トンで、必要な推進剤を求めます。

dv_target = 9400      # LEO到達に必要なΔv [m/s]
m_dry = 5000          # 燃料以外の質量 [kg]

# Δv = ve*ln(m0/mf) を m0 について解く(mf = m_dry)
mass_ratio = np.exp(dv_target / ve)
m0 = m_dry * mass_ratio
propellant = m0 - m_dry

print("質量比 m0/mf:", round(mass_ratio, 2))       # ≈ 15.47
print("必要な推進剤:", round(propellant), "kg")     # ≈ 72,332 kg

結果は衝撃的です。5トンを打ち上げるのに約72トンの燃料——質量比は15倍以上。ロケットが「ほとんど燃料タンク」である理由が、数字ではっきりわかります。

⚠️

対数の残酷さ

Δvを少し増やそうとすると、必要な燃料は指数関数的に膨れ上がります。dv_target を 9400 → 12000 に変えて propellant を再計算してみてください。燃料が一気に跳ね上がるはず。これが「宇宙は遠い」の正体です。

🚀 ロケットを打ち上げてみよう

ボタンを押すごとに、点火→段の分離→軌道へと進みます

🛰️

スタンバイ

全段そろってスタンバイ

使い終わった段を捨てて軽くするのが「多段式」。宇宙に届くための工夫です

③ なぜ多段式ロケットなのか

空になったタンクを捨てれば、その後は軽い機体を加速できます。2段に分けて計算してみます。

def delta_v(ve, m0, mf):
    return ve * np.log(m0 / mf)

# 1段目: 総質量100t → 分離時30t
dv1 = delta_v(ve, 100_000, 30_000)
# 2段目: 25t → 8t(1段目のタンクを捨てた後)
dv2 = delta_v(ve, 25_000, 8_000)

print("1段目Δv:", round(dv1), "m/s")
print("2段目Δv:", round(dv2), "m/s")
print("合計Δv:", round(dv1 + dv2), "m/s")   # 単段より稼げる

同じ燃料でも、重い空タンクを引きずらない分だけ多段式が有利。これがすべてのロケットが多段式である理由です。

🌱

実機の数字で遊ぶ

比推力を上げる(Isp を大きくする)と必要燃料がどれだけ減るか試すと、各社が高性能エンジンに投資する理由が見えてきます。再使用ロケットの話は再使用ロケットへ。

まとめ

  • ツィオルコフスキー式 Δv = ve·ln(m0/mf) が宇宙工学の出発点
  • 質量比は対数で効くので、速度を稼ぐには桁違いの燃料が要る
  • 5トンのLEO打ち上げに約72トンの推進剤(質量比15倍超)
  • 空タンクを捨てられる多段式が、同じ燃料でより遠くへ届く

もう少し詳しく(背景と理論)

ロケット方程式は Konstantin Tsiolkovsky が1903年に導いた、宇宙工学の最も基本的な式です1。Δv = ve · ln(m₀/mf) の形で、得られる速度変化 Δv は排気速度 ve と質量比(初期質量÷空虚質量)の自然対数に比例します。ここで ve = Isp · g₀(比推力×重力加速度)です2。対数であることが決定的で、Δv を2倍にするには質量比を指数的に増やさねばならず、燃料が燃料を運ぶ「悪循環」に陥ります。これを断ち切るのが多段化——燃え終わったタンクを捨てて空虚質量を減らし、各段の質量比を掛け合わせて大きな Δv を稼ぎます3。化学ロケットの ve に限界があるため、イオンエンジンなど高 Isp の推進が探究されています。

次の一歩 🌸

ロケットの基本はロケットのしくみ、打ち上げの流れは打ち上げプロセス、コストを下げる工夫は再使用ロケットへどうぞ。

Footnotes

  1. Tsiolkovsky, K. (1903). ロケット方程式 Δv = ve·ln(m₀/mf) を導出。質量比の対数で最終速度が決まることを示した宇宙工学の礎。

  2. 比推力 Isp[s] は推進剤の効率指標で、排気速度 ve = Isp·g₀ に対応。化学ロケットで約300〜450秒、イオン推進で数千秒。

  3. 多段式は空になった段を分離して不要質量を捨てる。各段の質量比の積で総Δvを得るため、単段より効率的に軌道速度へ到達できる。

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