手を振るソラくんゆるふわ宇宙・航空
宇宙開発中のソラくん

衛星スマホ直接通信とは|スマホがそのまま"衛星電話"になる2026年

2026-09-16 ・ 入門

#衛星スマホ直接通信#Direct-to-Cell#Starlink#NTN

「電波が届かない」——山の中や海の上でスマホを見て、そう思った経験がある人は多いはず。その"圏外"が、2025年から2026年にかけて急速に埋まりつつあります。専用の衛星電話ではなく、いつも使っているスマホがそのまま低軌道の衛星とつながる「衛星スマホ直接通信(Direct-to-Cell)」が、日本の主要キャリア全社で動き始めたからです。この記事では、その仕組みと2026年時点の状況を整理します。

この記事で分かること

  • 衛星スマホ直接通信(Direct-to-Cell)とは、専用の衛星電話ではなく普段使っているスマホがそのまま低軌道衛星と通信し、山間部や海上など地上の基地局が届かない場所でもメッセージやデータ通信ができる技術
  • 日本ではKDDI(au)が2025年4月に世界初のDirect-to-Cellサービスを商用化し、同年8月には衛星データ通信にも対応。2026年にはソフトバンク(4月10日)とNTTドコモ(4月27日)もStarlinkを使ったサービスを開始し、主要3社が揃った
  • 楽天モバイルはStarlinkではなく米AST SpaceMobileと提携し、2026年内に独自の衛星直接通信サービス開始を予定。AST SpaceMobileは2026年4月にFCCから248機体制での商用許可を取得している
  • 技術的には3GPPが標準化した『NTN(非地上系ネットワーク)』の仕組みを使い、衛星が地上の基地局と同じように振る舞う。現状は速度や対応アプリが限定的で、料金は各社とも当面無料という導入期にある

対象読者:通信・宇宙ビジネスの動向に関心のある方

執筆:ゆるふわ宇宙編集部 最終更新日:2026年9月16日

衛星スマホ直接通信とは:専用端末はもう不要

衛星スマホ直接通信(Direct-to-Cell / D2D)(だいれくととぅーせる)

特別な衛星電話や外付けアンテナを使わず、市販の普通のスマートフォンがそのまま低軌道(LEO)の通信衛星と直接つながる技術です。地上の基地局が届かない山間部・離島・海上・災害時の被災地などでも、対応スマホであれば空を見上げるだけでメッセージの送受信や簡易なデータ通信ができます。

これまで「電波が届かない場所で連絡を取る」ためには、イリジウムなどの衛星電話や、専用の外付け端末が必要でした。値段も高く、一般ユーザーが日常的に持ち歩くものではありませんでした。Direct-to-Cellは、この前提を変える技術です。衛星側が「空の基地局」として振る舞うことで、手元のスマホをそのまま使えるようにしたのが最大のポイントです。

仕組み:NTNという"空の基地局"

この技術のベースになっているのが、3GPP(携帯通信の国際標準化団体)がRelease-17で標準化した「NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)」です1。衛星は地上の基地局と同じ通信方式・周波数帯を使い、スマホ側からは"少し遠くて速い基地局"のように見える設計になっています。

低軌道衛星は秒速7km前後で移動するため、地上の基地局とは違って電波にドップラーシフト(周波数のズレ)や伝搬遅延が生じます。3GPP NTNの規格は、衛星の軌道情報(エフェメリス)を使ってこのズレを事前に補正する仕組みを含んでおり、これによってスマホ側の改造なしに衛星と同期できるようになっています1。

☎️

従来の衛星電話

  • 専用の衛星電話端末が必要
  • 大きく重いアンテナを内蔵
  • 契約・端末代が高額
  • 一般ユーザーへの普及は限定的
VS
📱

衛星スマホ直接通信

  • 普段使いのスマホがそのまま使える
  • 衛星が"空の基地局"として振る舞う
  • 2026年時点は主要キャリアが無料で提供
  • 速度は低速、対応アプリはまだ限定的

2026年、日本の主要4キャリアが出そろう

日本では2025年から2026年にかけて、KDDI(au)、ソフトバンク、NTTドコモ、楽天モバイルの4社が相次いでサービスを開始・発表しました。

🛰️

2025年4月10日

au Starlink Directがアジア初のDirect-to-Cell商用サービスを開始(KDDI・沖縄セルラー)

📶

2025年8月28日

au Starlink Directが世界初の衛星データ通信に対応

📱

2026年4月10日/27日

SoftBank Starlink Direct(4/10)、docomo Starlink Direct(4/27)がサービス開始

🌐

2026年10〜12月ごろ

楽天モバイルがAST SpaceMobileと連携したサービス開始を予定

ここで注目したいのは、4社が同じ陣営ではないという点です。au・ソフトバンク・docomoの3社はいずれもSpaceXの「Starlink」衛星を使う一方、楽天モバイルは米国のAST SpaceMobileと提携しています2345。AST SpaceMobileは2026年4月21日、米連邦通信委員会(FCC)から248機の衛星群展開と、通信事業者が持つ地上系の周波数帯をそのまま衛星から使う「Supplemental Coverage from Space(SCS)」による商用サービスの許可を取得しており、StarlinkとAST SpaceMobileという2つの陣営が世界規模で競い合う構図が見えてきています6。

💡

関連記事もあわせて

GPSなど衛星を使った位置測定の仕組みはGPSのしくみをやさしく解説、こうした衛星群を支えるビジネス構造は衛星ビジネスの収益モデル、大量の衛星を運用する仕組み全体はメガコンステレーションの記事で扱っています。

課題:まだ"低速・限定的"な導入期

普及が進んでいるとはいえ、Direct-to-Cellは決して"どこでも普通に使えるネット回線"ではありません。

⚠️

速度と対応範囲の壁

au Starlink Directのデータ通信は、開始当初は地図・天気・災害情報など19個の対応アプリと数機種のスマホに限られていました。スマホ側の小さなアンテナで衛星の弱い電波を受けるという物理的な制約があるため、速度は地上の4G・5Gに遠く及びません。当面はメッセージの送受信や位置共有、緊急速報の受信が主な使い道で、動画視聴のような大容量通信には向いていないのが実情です2。

もう一つの論点が、収益モデルです。2026年時点では各社ともDirect-to-Cellを既存プランの契約者に追加料金なしで提供しており、単体で儲ける仕組みにはなっていません。衛星の打ち上げ・運用コストをどう回収するのかは、各キャリアと衛星事業者にとって今後の課題です。加えて、AST SpaceMobileが採用するSCS方式は、通信事業者がすでに持つ地上系の周波数帯を衛星からも使うため、既存ユーザーの通信に干渉させないための技術的な調整が必要になる点も、Starlink陣営とは異なる難しさです6。

まとめ

  • 衛星スマホ直接通信(Direct-to-Cell)は、専用の衛星電話ではなく普段使いのスマホがそのまま低軌道衛星とつながり、山間部や海上でもメッセージ・データ通信ができる技術
  • 3GPPが標準化した「NTN」の仕組みにより、衛星が地上の基地局と同じ方式で振る舞い、ドップラーシフトや遅延を補正してスマホ側は無改造で使える
  • 日本ではau(2025年4月)、ソフトバンク(2026年4月10日)、docomo(2026年4月27日)がStarlinkを使ったサービスを開始し、楽天モバイルはAST SpaceMobileと提携して2026年内の開始を目指す
  • 現状は速度・対応アプリが限定的で料金は無料が中心の導入期。収益化や周波数干渉の調整が今後の課題

もう少し詳しく(背景)

日本で衛星スマホ直接通信への関心が高いのには、地理的な事情があります。山間部や離島が多く、地上の基地局を全国均一に整備するにはコストと時間がかかる一方、台風や地震で地上の通信インフラそのものが被災するリスクも抱えています。Direct-to-Cellは、平常時の"圏外"対策だけでなく、災害時に地上網が機能しなくなった際の予備手段としても位置づけられており、KDDI・ソフトバンク・NTTドコモの発表がいずれも防災・緊急速報の受信を前面に打ち出しているのはこの文脈によるものです。

一方で、この動きは通信業界と宇宙ビジネスの境界がなくなっていく一例でもあります。かつて衛星通信は法人向けの特殊な回線というイメージが強かった領域ですが、Direct-to-Cellはコンシューマー向けの携帯電話プランに組み込まれる形で、数千万人規模のユーザーに一気に届く土台になりました。StarlinkとAST SpaceMobileという2つの衛星群が、それぞれ異なる通信事業者と組んで世界中でシェアを競う構図は、メガコンステレーションが抱えるビジネス上の競争環境の延長線上にあるとも言えます。宇宙ビジネス全体の広がりは宇宙ビジネスの全体像、2026年時点の宇宙経済の全体像は2026年の宇宙経済の記事もあわせてご覧ください。

参考資料・出典

ゆるふわポータルでは、一次情報・公的資料にもとづき、専門用語をできるだけやさしく翻訳することを心がけています。内容に誤りや古い情報がある場合は、お問い合わせからご連絡ください。

執筆:ゆるふわ宇宙編集部 最終更新日:2026年9月16日

Footnotes

  1. 総務省「令和5年版情報通信白書」による。NTN(非地上系ネットワーク)は3GPPのRelease-17で標準化された技術で、衛星が軌道情報(エフェメリス)を用いてドップラーシフトや伝搬遅延を補正しながら、地上の基地局と同様の方式でスマホと通信する仕組みが規定されている。 ↩ ↩2

  2. KDDIニュースルームの発表によれば、KDDIと沖縄セルラーは2025年4月10日にアジア初の衛星スマホ直接通信サービス「au Starlink Direct」を開始し、2025年8月28日には世界初の衛星データ通信への対応を発表した。当初の対応アプリは19個、対応機種はGoogle PixelやGalaxyなど数機種に限られていた。 ↩ ↩2

  3. ソフトバンク株式会社の公式発表によれば、「SoftBank Starlink Direct」は"ソフトバンク""ワイモバイル""LINEMO"で2026年4月10日に提供を開始し、対象プランの契約者は申し込み不要・追加料金なしで利用できるとしている。 ↩

  4. NTTドコモの公式発表によれば、「docomo Starlink Direct」は2026年4月27日に提供を開始し、ahamoを含む全プランの契約者(約2,200万人)が当面無料で利用できるとしている。 ↩

  5. 宙畑(sorabatake)の報道によれば、楽天モバイルは米AST SpaceMobileと提携し、2026年10〜12月ごろに衛星スマホ直接通信サービスの国内提供を開始する計画を示している。 ↩

  6. Via Satelliteの報道によれば、米連邦通信委員会(FCC)は2026年4月21日、AST SpaceMobileに対し248機の衛星群展開と、通信事業者の地上系スペクトラムをそのまま衛星から使う「Supplemental Coverage from Space(SCS)」による直接通信サービスの商用許可を与えた。 ↩ ↩2

この記事をシェア:𝕏 で共有LINEで送る

🔥 この分野の最新トレンドをチェック →

あわせて読みたい