
火星への打ち上げ窓をPythonで計算|なぜ"2年に1度"しか行けないのか
2026-09-23 ・ 実践
火星探査機のニュースは、決まって2年おきに集中します。なぜ好きなときに火星へ行けないのか? 理由は地球と火星が「ちょうどいい位置関係」になる打ち上げ窓が限られているから。この記事ではPythonで、その周期を計算します。
会合周期とは
地球も火星も太陽を回っていて、速さが違います。両者が「打ち上げに最適な配置」に戻ってくる周期を 会合周期(synodic period) と呼びます。これが打ち上げ窓の間隔です。
準備
pip install numpy
① 会合周期を計算
各惑星の公転周期から、会合周期を求めます。式は「角速度の差」から導けます。
def synodic_period(T1_days, T2_days):
# 1/T_syn = |1/T1 - 1/T2|
return 1 / abs(1/T1_days - 1/T2_days)
earth = 365.25
planets = {
"火星": 687.0,
"金星": 224.7,
"木星": 4332.6,
}
for name, T in planets.items():
syn = synodic_period(earth, T)
print(f"地球↔{name}: 会合周期 {syn:.0f} 日 = 約 {syn/365.25:.2f} 年")
出力:
地球↔火星: 会合周期 780 日 = 約 2.14 年
地球↔金星: 会合周期 584 日 = 約 1.60 年
地球↔木星: 会合周期 399 日 = 約 1.09 年
地球と火星の会合周期は 約780日=2.14年。だから火星探査は約2年に1度なのです。次の窓を逃すと2年待ち——探査計画がこの周期に縛られる理由がわかります。
② なぜ木星は毎年行けるのか
木星の会合周期は約399日=ほぼ1年。外側の惑星ほど動きが遅く、地球がすぐ追いつくので窓が頻繁に来ます。逆に、地球のすぐ外の火星は速度が近いため、追いつくのに時間がかかり窓が空きにくいのです。
厳密には毎回少し違う
火星の軌道は楕円で離心率が大きいため、窓ごとに最適条件が微妙に変わります(近日点の位置による)。今回は円軌道を仮定した概算ですが、「約2年周期」という本質は正確に捉えられます。
まとめ
- 打ち上げ窓は惑星同士が最適配置になるタイミング
- その間隔=会合周期。地球↔火星は約780日=2.14年
- だから火星探査は約2年に1度に集中する
- 窓を外すと遠回りになり必要な燃料が急増する
もう少し詳しく(背景と理論)
打ち上げウィンドウは、目標の軌道面や天体の位置に合わせて発射できる限られた時間帯です。地球周回では、目標の軌道面が発射地点の真上を通る瞬間に打ち上げると面内変更の Δv を節約できます1。惑星間では、出発天体と到達天体の相対位置(位相角)が正しくそろう時期にしか効率的に飛べず、その周期が会合周期(synodic period)です。火星なら約26か月ごとにしか好機が来ません2。ミッション設計では、出発日と到達日の組み合わせに対する必要 Δv を等高線で描いたポークチョップ・プロットで最適な窓を探します3。ホーマン遷移やΔv収支と密接に関わります。
次の一歩 🌸
軌道遷移のホーマン遷移、燃料計画のΔv収支、月・火星探査は月と火星をめざすへどうぞ。