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軌道の減衰をPythonで見積もる|低軌道の衛星が"落ちてくる"わけ

2026-09-24実践

#軌道減衰#大気抵抗#スペースデブリ#Python#実践

低軌道の衛星は放っておくと、いつか落ちてきます。原因は超希薄な大気のわずかな抵抗。この記事ではPythonで軌道減衰を簡易シミュレーションし、「なぜ高度が寿命を決めるのか」「なぜISSは定期的に高度を上げるのか」を数値で理解します。スペースデブリ問題にも直結する話です。

なぜ落ちるのか

高度数百kmでも、ごく薄い大気が残っています。衛星はそこを秒速8kmで突っ切るので、わずかな抵抗でも少しずつエネルギーを失い、高度が下がる。下がるほど大気が濃くなり、抵抗が増えて加速的に落下します。

準備

pip install numpy

① 大気密度と抵抗をモデル化

高度で急激に薄くなる大気密度を、指数モデルで簡易表現します。

import numpy as np

GM = 3.986e14
R = 6.371e6

def air_density(alt_km):
    # 高度400km基準の指数大気モデル(おおよその近似)
    return 2.5e-12 * np.exp(-(alt_km - 400) / 50)

for alt in [300, 400, 500, 600]:
    print(f"高度 {alt}km: 密度 {air_density(alt):.2e} kg/m³")

高度が100km上がるごとに密度は約7分の1に。だから少し高いだけで寿命が大きく延びるのです。

② 軌道減衰をシミュレーション

抵抗で少しずつ高度が下がる様子を、時間刻みで追います。

def simulate_decay(alt0_km, mass=1000, area=5, cd=2.2, days_max=3650*4):
    a = R + alt0_km * 1000                    # 長半径(円軌道と仮定)
    for day in range(days_max):
        alt = (a - R) / 1000
        if alt < 120:                         # 120kmで再突入とみなす
            return day
        rho = air_density(alt)
        # 円軌道の減衰式:da/dt = -(Cd·A/m)·ρ·√(GM·a)
        da_per_sec = -(cd * area / mass) * rho * np.sqrt(GM * a)
        a += da_per_sec * 86400               # 1日ぶん進める
    return None

for alt0 in [300, 400, 500, 600]:
    life = simulate_decay(alt0)
    msg = f"約 {life} 日({life/365:.1f} 年)" if life else ">15年"
    print(f"初期高度 {alt0}km → 寿命 {msg}")

出力:

初期高度 300km → 寿命 約 56 日(0.2 年)
初期高度 400km → 寿命 約 408 日(1.1 年)
初期高度 500km → 寿命 約 2985 日(8.2 年)
初期高度 600km → 寿命 >15年

300kmは約2ヶ月、400kmは約1年、500kmは約8年——わずか100kmの差で寿命が桁で変わることが見えます。

🌱

ISSがリブーストする理由

ISSは高度約400kmで、放置すると年に数kmずつ落ちます。だから定期的にエンジンを噴かして高度を上げる「リブースト」を行っています。太陽活動が活発だと大気が膨張して抵抗が増え、落下が速まります。

⚠️

デブリ対策としての『自然落下』

低軌道の衛星は、この軌道減衰で運用終了後に自然に落ちて燃え尽きるよう設計されます(25年ルールなど)。逆に高高度のデブリは何百年も残るため、スペースデブリ問題が深刻です。今回のモデルは簡易ですが、傾向は現実を捉えています。

まとめ

  • 低軌道でも薄い大気の抵抗で衛星は少しずつ高度を失う
  • 大気密度は高度で指数的に変化。少し高いだけで寿命が延びる
  • 300kmは約2ヶ月、400kmは約1年、500kmは約8年と、高度で寿命が激変
  • ISSはリブーストで高度維持。デブリ対策にも軌道減衰が関わる

もう少し詳しく(背景と理論)

低軌道の衛星は、希薄な大気による抵抗で少しずつエネルギーを失い、高度が下がって最後は再突入します。抵抗力は F = ½·Cd·A·ρ·v² で、機体の弾道係数 B = m/(Cd·A)(質量を空気抵抗で割った量)が大きいほど寿命が延びます1。ここで直感に反するのが、抵抗で減速するのに衛星は加速するという「衛星のパラドックス」——高度が下がると軌道速度が増えるためで、抵抗はエネルギー(=軌道長半径)を奪って軌道を縮めます2。大気密度 ρ は太陽活動で大きく変動し、太陽極大期には熱圏が膨張して抵抗が増え、寿命予測が難しくなります3

次の一歩 🌸

ゴミ問題はスペースデブリ、軌道の基礎は軌道速度、大気の力は揚力と抗力へどうぞ。

Footnotes

  1. 弾道係数 B=m/(Cd·A)。大きいほど(重く・小さく)抵抗の影響を受けにくく軌道寿命が長い。軽く面積の大きい衛星ほど早く落ちる。

  2. 抵抗はエネルギーを奪い長半径を縮める。ビス・ビバより低い軌道ほど速いため、結果的に衛星は「減速されつつ加速する」。

  3. 上層大気の密度は太陽活動(F10.7指数)で数倍変わる。太陽極大期は熱圏が膨張し抵抗増大、再突入予測の不確実性が増す。

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